090: 自転車のことを尋ねる
男
の子は急に興味を失ったように言った。
「多分海の方に行ったんじゃないかな」
彼は首をぐるりと回した。その方向にはリゾートホテルがあった。
その向こうに海があるのだろう。
「ほら、これでしょ」
彼が差し出したのは自転車の鍵だった。見覚えのあるキーホルダーがついている。
誰に貰ったものだったか。見覚えはあるのに全く思い出せない。
山から降りてくる霧がどんどん深くなる。気づくと男の子はいつの間にかいなくなっていた。
早く自転車を見つけなければ。
霧を避けて少し歩くと森を抜けた。そのまま海の方向へと向かった。