037: 自転車の鍵
拾 い上げた鍵を元通りポケットに押し込んで、きみは下着を脱いで裸になった。浴場のドアを押し開ける。
浴場は思った以上に狭かった。身体を洗う場所は二ケ所しかなく、どちらも使用中だ。
せいぜい二人分のスペースしかない。
小さな浴槽には年配の人が目を瞑って入っている。
髪を洗う人の横をすり抜けるようにして露天風呂のドアへと向かう。
外に出た瞬間に強い風が吹いた。
全身にまともに冷たい風を浴びたきみは急いで露天風呂へ向かう。
岩で作られた露天風呂は広かった。湯煙の向こうには海が見えるはずだが、いつの間にか日が暮れてしまい、もう何も見えない。
掛け湯をしてお湯の温度を確かめてから、きみはそっと湯舟に入った。
広い露天風呂のどこかで話し声が聞こえる。その声の断片が少しずつ君の耳に届く。
きみは、