042: もう少し話に耳を傾ける
少
しずつ聞こえていた言葉の断片がやがて繋がり、はっきりと聞こえるようになった。
親子ほどの年の離れた二人が会話している。
何がきっかけで始まった会話なのかはわからないが、ふたりは共に早口だった。言い合ううちに少しずつ加速してきたようだ。
「知り合いの学校の先生が言ってたんですけど」
「でもうちの叔父が言ってたのは」
どうやらどちらの知り合いが偉いのか、という争いになっているようだ。
きみは興味を失って意識を違う方へ傾けることにした。
すっかり日は沈み、空には細い月が浮かんでいる。
耳を澄ますと、小さく波の音が聞こえた。
露天風呂の入り口に用意されているバスタオルとレインコートが目に入った。
きみはバスタオルで身体を拭き、少し迷った後でレインコートを身に着けた。
半透明の白いビニール製だが何も着ないよりはマシだろう。
そのまま小さな茂みを乗り越えて波の音のする方へ歩く。月明りが冷たい石畳を照らしてくれていた。
きみは、