086: 諦めて捕まる
き
みは観念して立ち止まる。きみの肩を掴んだ人物が目の前に立った。
「どうして逃げるの」
目の前に立っている小柄な女性はシクだった。なぜか名前は憶えている。
彼女は悲しそうにきみを見つめる。
「この世界のルールはもう知っているはずだよね」
きみは頷いた。
「じゃあ私のページにはもう行った?」
きみは曖昧な答えしか返せない。
「わたしは全然構わないよ。いつでも覗きにきてくれて」
シクはそう言って笑った。
「わたし達はみんなあなたを助けるためにいるんだから」
みんな? 怖い老人もいたような気がする。
「ハッパさんね。あの人はそういう役目だから。でも本当は役に立つ人よ」
本当は役に立つ。そうなのだろうか。次に会える時があったら尋ねてみよう。
「ハッパさんにも直接会いにいけばいいんじゃない?」
あの老人の名前はハッパさんというのか。顔に似合わずかわいらしい名前だ。
きみはシクと別れて、ホテルの方に向かった。