056: 最終電車まで時間があまりない
き
みは駅ビルまで早足で歩く。何人かに声を掛けられた気がするが、相手をしている時間はない。
急いで券売機で切符を買うと、きみは長いエスカレーターを上った。
ホームでは次の電車のアナウンスが聞こえている。なんとか間に合った。
滑るように入ってきたオレンジ色の電車が止まり、きみは安堵の気持ちで乗り込んだ。
その電車にはシートがなく、両側は大きくガラス張りになっている。景色を楽しむための観光列車なのだろう。
他の乗客は皆ガラスに張り付くようにして外を眺めている。
観光列車はゆっくりと動き始め、駅舎を出るとすぐに左右に大きく海が広がった。