019: 名前は
「
あなたは勘違いをしています」
また勘違いか。きみはここに来てから勘違いばかりしている。
いや、勘違いではない。知らないだけなのだ。
そう反論したくなったが、相手の言葉の続きを待つ。
「全員が名前を持っているとは限らない」
そうなんだ。
「謎を解きたいのなら、ちゃんと考えるべきだと思いますよ」
姿を現すつもりはないようだ。声に聞き覚えがある。探偵?
「名前を探すだけではなく、全体をくまなく見ることが重要ですよ」
きみは声の主を確信する。玩具探偵だ。
「もう少しかもしれませんね。頑張ってください」
ちょっと待って。きみがそう叫んだ時にはすでに人の気配は消えていた。
ここは玩具探偵の仕込んだ夢の世界だったのか。
いつの間にかきみは見覚えのある場所に立っていた。