営業自粛中 大阪市東成区 深江橋 おもちゃバー

051: リゾートホテルに行く

テルの入り口に立て掛けられた看板は白い鉄板に赤いペンキで描かれている。職人の手描きだった。
「天然温泉」という漢字四文字が見事なバランスをとっている。 これはすごい芸術家が手掛けた作品なのではないか。
きみは記憶を探ってみるが、芸術家の名前を誰ひとり思い出せなかった。
看板の横に立ち、ガラス張りのホテルを見上げると透明のチューブの中を透明のエレベーターが静かに上っていくのが見えた。
きみは何階建てなのか数えかけてやめてしまう。

ホテルのロビーは驚くほど広く、そして古かった。
五十年前くらいに建てられたのだろうか。重厚な内装からは歴史の趣きを感じられる。

正面にはなだらかにカーブを描いた大階段が二階へと続いている。
しかし、大階段は封鎖されていて上ることはできそうにない。

左手の奥には売店があるのだろうか。賑やかで庶民的な明かりが見える。赤い提灯が一瞬見えたような気がした。

受付に長い行列ができている。チェックインするのにどれくらい時間がかかるのか。
きみが急ぎ足で最後尾に並ぼうとした途端、カップルが二組割り込むように目の前で列に並んだ。

バカバカしくなってきみは列を離れた。

きみは、

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