001: はじまり
そ
よ風が髪を撫でて通り過ぎた。
晴天を見上げ、澄んだ空気を感じたきみは大きく息を吸い込んだ。
どこか近くに海があるのだろうか。一瞬潮の香りがした気がした。
目の前にはガラス張りの大きな建物がある。
どうやらリゾートホテルのようだ。遠くに見える看板には赤い文字で「天然温泉」と描かれていた。
電車の音に振り返ると高架になった線路が左右に真っ直ぐ伸びている。駅はデパートビルになっているようで、ひっきりなしに人が出入りしている。
自分の自転車をどこに停めたのだったか。確か自転車に乗ってここに来たと思ったが。違ったのかもしれない。
きみは、
